異世界冒険者ギルドの日常 – 第7章:後編

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 表彰式まであと四日。

 早朝のトリス支部はまだ薄闇の中だったが、倉庫棟の一室ではリリィがランタンを灯し、作業台へ山のような布地と金具を広げていた。

「正式招待だもん。みんなでおそろいの“ギルド礼装”を作りたいんだ!」

 彼女は瞳をきらきらさせながら、巻尺を私たちの胸に当てる。

 ティリアは袖をつまみ上げて眉をひそめる。「これ、布じゃなくて……鎖帷子?」

「うん、絹糸にミスリルの極細線を撚り合わせた“ドレスチェインメイル”! 見た目は礼服、でも斬撃耐性Aランク!」

 ガルドは腕を組んで満面の笑み。「動きやすくて防御も高いスーツ? 最高じゃねぇか!」

 私は苦笑いしつつ仕訳帳を覗いた。リリィが自腹で買い込んだ資材費は銀貨三百枚。

「こんな大金、どうやって……?」

「王都から送られてきた“功労金”。ユウトの名義になってたけど、共有財産ってことでしょ?」

「いや、僕は窓口係だから……」

 言いかけたところでセルマが顔を出し、「ユウト、早朝だけど急ぎの荷受けよ!」と呼びに来た。