第1章: 前編|後編 第2章: 前編|後編 第3章: 前編|後編 第4章: 前編|後編
第5章: 前編|後編 第6章: 前編|後編 第7章: 前編|後編
表彰式まであと四日。
早朝のトリス支部はまだ薄闇の中だったが、倉庫棟の一室ではリリィがランタンを灯し、作業台へ山のような布地と金具を広げていた。
「正式招待だもん。みんなでおそろいの“ギルド礼装”を作りたいんだ!」
彼女は瞳をきらきらさせながら、巻尺を私たちの胸に当てる。
ティリアは袖をつまみ上げて眉をひそめる。「これ、布じゃなくて……鎖帷子?」
「うん、絹糸にミスリルの極細線を撚り合わせた“ドレスチェインメイル”! 見た目は礼服、でも斬撃耐性Aランク!」
ガルドは腕を組んで満面の笑み。「動きやすくて防御も高いスーツ? 最高じゃねぇか!」
私は苦笑いしつつ仕訳帳を覗いた。リリィが自腹で買い込んだ資材費は銀貨三百枚。
「こんな大金、どうやって……?」
「王都から送られてきた“功労金”。ユウトの名義になってたけど、共有財産ってことでしょ?」
「いや、僕は窓口係だから……」
言いかけたところでセルマが顔を出し、「ユウト、早朝だけど急ぎの荷受けよ!」と呼びに来た。