第1章: 前編|後編 第2章: 前編|後編 第3章: 前編|後編 第4章: 前編|後編
第5章: 前編|後編 第6章: 前編|後編 第7章: 前編|後編 第8章: 前編|後編
王都グラン=アーク──暁の霧を切り裂くように、白壁の城郭と尖塔が朝日を受けて黄金に輝く。
南大街へ差しかかると、石畳の両脇に小旗がはためき、衛兵隊の音楽隊が軽やかなファンファーレを奏でていた。
「お出迎えまであるなんて、大げさじゃない?」
御者台のティリアが肩をすくめる。
「お祭りは派手なほどいいだろ」
ガルドは燕尾チェインメイルを誇らしげに揺らし、ハンドルを取る馬へにっこり微笑んだ。
馬車が監査院前の広場へ入ると、色とりどりのテントが並び、庶民や貴族が混ざって縁日さながらの賑わいを見せていた。
「功労者表彰と市民感謝祭を同時開催とは、マリエルもやるわね」
クラリス支部長が眩しそうにランタンを仰ぐ。
荷を解くと、リリィが桜色チェインメイルを一人ずつ手渡し、最後に自分の工具ベルトを腰へ締めた。
「式の途中でネジが弾けても私が直すから、安心して!」
「頼もしいね」と私は笑い、胸元の襟を整えた。腕章の裏に縫い付けた赤布が軽く肩を叩く。