異世界冒険者ギルドの日常 – 第8章:後編

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 王都グラン=アーク──暁の霧を切り裂くように、白壁の城郭と尖塔が朝日を受けて黄金に輝く。

 南大街へ差しかかると、石畳の両脇に小旗がはためき、衛兵隊の音楽隊が軽やかなファンファーレを奏でていた。

 「お出迎えまであるなんて、大げさじゃない?」

 御者台のティリアが肩をすくめる。

 「お祭りは派手なほどいいだろ」

 ガルドは燕尾チェインメイルを誇らしげに揺らし、ハンドルを取る馬へにっこり微笑んだ。

 馬車が監査院前の広場へ入ると、色とりどりのテントが並び、庶民や貴族が混ざって縁日さながらの賑わいを見せていた。

 「功労者表彰と市民感謝祭を同時開催とは、マリエルもやるわね」

 クラリス支部長が眩しそうにランタンを仰ぐ。

 荷を解くと、リリィが桜色チェインメイルを一人ずつ手渡し、最後に自分の工具ベルトを腰へ締めた。

 「式の途中でネジが弾けても私が直すから、安心して!」

 「頼もしいね」と私は笑い、胸元の襟を整えた。腕章の裏に縫い付けた赤布が軽く肩を叩く。