異世界冒険者ギルドの日常 – 第9章:後編

第1章: 前編後編 第2章: 前編後編 第3章: 前編後編 第4章: 前編後編
第5章: 前編後編 第6章: 前編後編 第7章: 前編後編 第8章: 前編後編
第9章: 前編|後編

 霧を抜けた馬車は、巨大な湖を取り囲む要塞都市セレシアへと滑り込んだ。湖面には世界樹の影が鏡のように映り、青灰色の刃のような根が水深に伸びている。街路は環状に整備され、祭り用の屋台枠があちこちで組み立て途中だった。

 「まずは本部仮庁舎で受付を済ませろ、だってさ」

 街門で旅券を照合した衛兵が、臨時監査員の通行証と簡易地図を手渡してくる。リリィが地図を受け取り、歯車コンパスで最短経路を弾き出した。

 「湖畔の臨時会計センター。世界樹の根系パイプから直接魔力ログを吸い上げる場所みたい」

 「不正があるなら本陣のど真ん中ってわけだな」

 ガルドは大剣の柄を軽く叩き、ティリアは頭上を旋回する白鳩に視線を投げた。

 「鳥が落とす偵察符の数、多すぎるわ。誰かが祭りの裏で金の流れを探ろうとしてる」

タイトルとURLをコピーしました