紫色の脈動が壁面を滑り、歯車模様が不気味に浮かび上がる。
残り時間は四分三十秒。制御盤のカウントが速まるたび、炉心に満ちる魔力の唸りが低い地鳴りとなって足元を震わせた。
「非常遮断栓は制御盤裏の第二層パイプラインだ。だが正面からは届かない」
ユウトは〈エクスセル〉で炉心の断面図を脳裏に展開し、導線で塗り分けられた魔力管を指さした。
「側壁に五十センチ幅の保守用ハッチがあるはず。リリィ、ジャッキの応用でこじ開けられる?」
「もちろん! ただし合金鋼だから削るのに三十秒はちょうだい!」
「じゃあ俺が支えておくぜ!」
ガルドが大剣を逆手に、閉じかけた石壁の隙間へ刃を深く噛ませる。石と鉄が軋み、筋肉が怒張した。
「ティリア、君は上部配管の魔力弁を狙撃して流量を二割落としてくれ。暴走までの猶予を稼ぐんだ」
「了解。三射で仕留めるわ」
カウントは三分五十五秒。
ティリアの弦が号砲のように鳴り、魔力を帯びた矢が青い軌跡を描く。──ガン、と硬質な破裂音。管を締めるリングの心臓部に穴が開き、紫の流動が勢いを失った。
二本目、三本目。矢が命中するたびに炉心の脈動がわずかに鈍る。
「あんたの魔力制御、見直したわ」
「褒める暇があるなら早く開けなさい!」
リリィは火花散るドリルでハッチのリベットを削り、最後のボルトにバールを当てる。