夜明けのペンダント – 第4章: 第2話

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倉庫街の闇を逃れた秋山玲と高橋航は、背後から迫る足音を振り切りながら細い路地を抜けた。玲は肩で息をしつつ、レコーダーを懐から取り出す。録音メディアは無事だった。航は手ぶくろを握りしめながら言った。

「逃げられたみたいですね……でも、資料は手に入ったんですか?」

玲はうなずき、バッグから数枚の古写真と一巻の羊皮紙を取り出す。メモがぎっしり書き込まれた羊皮紙には、封印と解除の儀式に関する呪文と図式が描かれている。写真は松永家の儀式の記録で、白いローブの幹部たちが並ぶ場面が複数収められていた。

「これがあれば、黎明の会の正体と目的を暴ける。特にこの呪文は、封印を逆に解放する手口が示されている。白井が“改良”と呼んでいたのは、この方法のことだろう」

高橋は希薄な月明かりに照らされる写真を眺め、顔を曇らせた。

「生贄の代償を清算しないと、ペンダントは力を再生し続ける……恐ろしい話です」

玲はバッグに資料を戻しながら、足元の影を確かめる。夜風に揺られた袋がかすかに音を立てる。