夜明けのペンダント – 最終章: 第1話

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旧松永邸の石造りの門扉は、長い間開かれることなく錆びついていた。秋山玲は高橋航とともに、午前零時を少し回った頃、その門を押し開けた。冷たい海風が波音とともに吹き込み、邸の廊下を抜けると、古い螺旋階段が地下へと続いている。

「この先に祭壇があるはずです。灯りを消して進みましょう」

玲は懐中電灯を消し、月明かりだけを頼りに先導する。航も震える声で答えた。

「わかりました……怖いですが、あの箱を封印しないと」

二人は階段を慎重に降り続け、やがて石造りの広間へと出た。壁には古い祈祷文が刻まれ、床には十本ほどのロウソクを立てるための円形の彫り込みが残っている。中央には苔むした木製の祭壇台があり、かつてここで行われた生贄儀式の痕跡を静かに物語っていた。

玲はバッグから巻物を取り出し、そこに記された封印呪文の図式を確認する。文書には、赤いインクで描かれた円陣の位置と、それを取り囲む五芒星の線が示されている。