第1章:前編|後編 第2章:前編|後編 第3章:前編|後編
第4章:前編|後編 第5章:前編|後編 第6章:前編|後編
第7章:前編|後編 第8章:前編|後編 最終章:前編|後編
暗い通路を抜けた先、アレンたちは要塞の上層へとつながる階段を見つけた。砲火の攻撃をやり過ごしながら急ぎ足で駆け上がると、そこは要塞の中枢に近い大広間らしく、やたらと高い天井に無骨な梁が交差し、鉄骨の柱が周囲を取り囲んでいる。金属のきしむ音と火薬の匂いが入り混じり、どこかで繰り返し鳴り響く警報のベルが嫌でも緊張感を煽る。
「まったく、厄介な守りだ。もう少し奥に紅蓮のガイウスがいるんだろうが、地形もよくわからないし、どう攻めるか……」
ラウルが吐き捨てるように言う。軍経験を持つ彼でも、この要塞の広大さと複雑な構造には頭を抱えているようだった。リタは壁に備え付けられた配線類やパネルを凝視しながら、低い声でアレンに呼びかける。
「ここの電源らしきものを落とせれば、上層デッキの砲やエレベーターが使えなくなるかもしれない。でも、敵も当然その対策をしてるでしょうね」
アレンはリタの言葉にうなずきつつ、大広間の中央を見つめる。そこには複数の通路が交差し、今も空賊の兵士たちが走り回っているのが見える。どうやら彼らも侵入者が要塞の中にいると気づき、迎撃の準備を進めているらしい。噂通り紅蓮のガイウスの部下は統率が取れており、その動きに無駄がない。
「急がないと増援が来る。俺たちが攪乱できてるうちに、ガイウスのいる中枢を抑えるんだ。リタは手分けして要塞のシステムを一時停止させられそうなら挑戦して。ラウルとライナスは俺と一緒に核心部を目指そう」
アレンが短く指示を出すと、リタは即座に「了解」と答え、壁際の制御パネルへ駆け寄る。そこに配線をこじ開けるような道具を突っ込み、何とかメイン系統を探ろうとしているらしい。空賊兵が数名、その動きに気づきかけたが、ラウルが機敏に動いて彼らの銃をたたき落とし、ライナスがロープで足元を絡めるようにして追い払う。
「いいぞ、リタ。そっちが終わったら合流してくれ!」
アレンはさらに上へ続く鉄製の階段を発見し、ライナスやラウルとともに上層を目指す。走るたびに重い金属の響きが足元を叩く。油断すれば上階からの狙撃に晒されるかもしれないが、今は一刻の猶予もない。要塞の深部、恐らく最も上のフロアに紅蓮のガイウスがいると踏んでいる。