和菓子の灯がともるとき – 01月03日 前編

「それくらいはさせてよ。私も父の店で育ったわけだし、和菓子を作る父の姿が好きだった。いきなり全部を投げうって地元に戻るのは難しいけど、完全に都会での生活に戻るのも納得いかない。だから、両方やってみたいの」

祥子も「由香に無理をさせたくない」という気持ちが強かったようだが、娘がここまで真剣ならばと態度を軟化させる。

「店を再開するにしても、いきなり全力とはいかないからね。段階的に、必要なところだけ手を貸してくれるなら、それは本当に助かるわ」

すると父は、少し照れくさそうに笑いながら言った。

「そこまでしてくれるなら、一緒に店を守ってくれると嬉しいな。なんだか、体が動かなくなった時に諦めかけた自分が恥ずかしいよ。調子に乗ってまた倒れないように気をつけるから、よろしく頼む」

家族の口から次々に前向きな言葉が出るのを聞くうちに、由香は心の中でしっかりと「よし、これでいいんだ」と決心する。もちろん、都会でのキャリアを完全に捨てるわけではないし、周囲に迷惑をかけるかもしれない。でも、やりたいことを両方とも大事にしながら、柔軟な生き方を見つけることは不可能ではない――そう確信に近いものを感じていた。

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